疾患の紹介
黄斑前膜(黄斑上膜、網膜前膜、網膜上膜)
網膜でモノを見る中心部である黄斑部に余計な膜が生じた状態です。黄斑前膜、網膜前膜、黄斑上膜、網膜上膜などの別名があります。初期は無症状ですが、進行すると視力が低下したり、ものがゆがんで見える、左右の眼でものの大きさが異なって見える、などの症状を呈することがあります。進行速度は患者さまごとによってさまざまで、無症状の方も多いです。症状があるものの長年進まない方もいれば、数か月の単位で進行し手術が必要になる方もいます。そのために黄斑前膜と診断された場合、定期的な診察が必要です。
特に原因がなく黄斑前膜になる方(特発性黄斑前膜)もいれば、なにか別の原因があって黄斑前膜になる方(続発性黄斑前膜)もいます。代表的な原因として、網膜裂孔や網膜分枝静脈閉塞症後、ぶどう膜炎などがあげられます(文献)。
健診で黄斑上膜といわれた場合、たとえ無症状でもこれらの病気が隠れている場合があるので眼科での診察をお勧めします。
黄斑前膜は、症状がなければ経過観察ですが、視力低下やゆがみが生じた場合は手術を行います。現時点では有効な薬による治療法はありません。一般的には視力が低下して歪みが生じた場合、または視力が良くても歪みが強い場合は手術することを検討します。当院では黄斑前膜の手術を日帰りで行っております。手術をすることで、視力や歪みの程度が改善することが期待できます。50歳以上の方は白内障手術も同時に行うことが勧められます。一般的には多焦点眼内レンズは適応外ですが、術前の視力によっては一部の多焦点眼内レンズが使用可能な場合もあります。
黄斑円孔
網膜において視力をつかさどる最も重要な部位である黄斑部に円孔が生じた状態です。視力の低下、歪み、暗点などを自覚します。小さいもの(円孔径≦250 µm)のものは自然閉鎖する場合(文献)もありますが、それ以上の場合は自然閉鎖することが少ないため手術が必要になります。放置した場合視力は徐々に悪化するため、診断がつき次第早めの手術が必要になります。手術としては、網膜硝子体手術となります。必ずガスを入れて終了するため術後1-2週間ほどうつ伏せが必要になります。初回円孔閉鎖率は90%程度(文献)と報告されています。初回で閉鎖しなかった場合は再手術が必要になります。
手術によって黄斑円孔が閉鎖した場合、見え方が改善します。改善の幅には個人差がありますが、術前の視機能が良い方ほど術後の視機能もよい傾向にあります(文献)。
当院では黄斑円孔の手術を日帰りで行っています。診断がつき次第、なるべく早くの手術ができるようにご案内しています。また術後うつ伏せが必要になるため、うつ伏せ用の枕を貸し出しております。円孔がなるべく閉鎖するように術式を工夫して行っておりますので、安心して当院で手術を受けることをご検討ください。
裂孔原性網膜剥離
一般的な網膜剥離と呼ばれる病気です。外傷性とそれ以外に分かれます。外傷性のものはボクサーなどに多いです。それ以外のものは萎縮円孔によって生じる場合、後部硝子体剥離に伴う網膜裂孔で生じる場合に分けられます。
萎縮円孔によるものは若年者が多く、進行がゆっくりであることが多いのが特徴です。
後部硝子体剥離に伴う網膜裂孔により生じた網膜剥離は進行が速い場合が多く、進行する前に手術が必要な準緊急疾患です。視力をつかさどる黄斑部まで剥離した場合、術後の視力がよくなかったり、歪みが残る場合があります(文献)。また、黄斑部まで剥離した場合でも3日以内とそれ以降では術後視力に差があることが報告されています(文献)。そのため、黄斑部まで剥離していたとしても、可能な限り早く手術を行うことが望ましいと考えています。治療としては原則手術となります。硝子体手術およびバックル手術、気体網膜復位術があり、それぞれ適応患者が異なります。若年者の萎縮円孔による網膜剥離はバックル手術の絶対的な適応になります。網膜裂孔による網膜剥離は硝子体手術の良い適応となります。また、一部の網膜裂孔による網膜剥離は手術ではなく、眼内にガスを注入する気体網膜復位術により治療することが可能です。治療法の選択については実際に患者さまを診察しないといけませんが、一般的に40歳未満では萎縮円孔による網膜剥離が多いためバックル手術の適応となり、40歳以上では網膜裂孔による網膜剥離がほとんどのため多くは硝子体手術で治療し、一部の方が気体網膜復位術で治療することになります。
当院では硝子体手術および気体網膜復位術に対応しており、網膜剥離に対しても、特に40歳以上の患者さまについては積極的に治療を行っております。来院後、適応があれば可能な限り即日で手術を実施しています。
なお、当院ではバックル手術には対応しておらず、40歳未満の患者さまの場合は、病態に応じて他院をご紹介させていただくことが多くなっております。
黄斑下出血
視力をつかさどる黄斑部に出血が生じることで、視力が低下します。原因としては網膜細動脈瘤や加齢黄斑変性が多いです。症状としては、ある日突然片目の視力が低下する、という訴えになります。網膜のどの層に出血するかで治療法が異なります。
内境界膜下出血という、網膜の一番浅い層に出血した場合は硝子体手術の良い適応になります。この場合、出血がある程度溶けるのを待ってから手術するので、症状が出現してから7-14日程度で手術を行います。手術は内境界膜を剥離することで出血を除去することができ、視力が改善します。
網膜の深い層の出血(網膜下出血)については、ガス移動術または硝子体手術が適応になります。どれくらい出血したか、またどの位置に出血したかで治療法を選択します。いずれも、術後はしばらくうつ伏せをしていただくことが多いです。
多くは視力が回復しますが、現病の状態によっては視力の回復が限定的になることも多い病気になります。
当院では硝子体手術およびガス移動術いずれも対応しています。うつ伏せ用の枕も貸し出していますので、安心して当院での治療を受けることをご検討ください。
硝子体出血
眼球の内部で出血が生じ、視力が低下した状態です。原因は様々で、糖尿病網膜症の重症化、網膜静脈閉塞症による新生血管、網膜細動脈瘤の破裂、加齢黄斑変性によるもの、網膜裂孔によるものなど多岐にわたります。まずはエコー検査で網膜剥離がないかどうか確認します。網膜剥離があった場合、網膜剥離に準じて緊急で手術が必要です。
網膜剥離がない場合、1か月ほどは様子を見ます。1か月してもあまり出血が改善しない場合は硝子体手術を行うことを検討します。硝子体手術では眼内の出血を除去し視力の向上を目指します。術後の見え方については、原因となった病気が大きく影響します。
1か月以上経過観察することもできますが、1か月待ってもあまり改善しない場合、硝子体出血が自然と良くなる可能性はかなり低い、または非常に時間がかかることが多いため、手術をお勧めしています。
基本的には1か月ほどまちますが、患者さまが早期に治療を希望する場合は1か月以内に手術をする場合もあります。
当院ではエコー検査機および硝子体手術機械がありますので、硝子体出血の経過観察および必要があれば硝子体手術を行っています。幅広い原因疾患に対応できる設備と技術をもっていますので、安心して当院に相談いただければ、と思います。
中心性漿液性網脈絡膜症(Central Serous Chorioretinopathy:CSC)
中心性漿液性網脈絡膜症は、網膜の中心部である黄斑部に網膜下液が貯留し、視力低下や変視症(物がゆがんで見える)、小視症(物が小さく見える)などを生じる疾患です。主に30~50歳代の男性に多くみられ、精神的ストレス、睡眠不足、ステロイド薬の使用などが発症の危険因子とされています。
病態としては、脈絡膜血管の透過性亢進により脈絡膜が肥厚し、網膜色素上皮(RPE)のバリア機能が障害されることで、液体が網膜下へ漏出すると考えられています。OCTで診断できます。
自然軽快する症例も多いため、初回発症例ではまずは経過観察が選択されます。しかし、慢性化し視機能障害を呈することも多いため、1か月程度経過観察しても改善がない場合、また再発を繰り返す場合などは治療が行われます。治療としては漏出点に対するレーザー治療や、脈絡膜の異常血管透過性を改善する目的で低用量光線力学療法(PDT)が行われます。また、加齢黄斑変性とオーバーラップする部分があり、加齢黄斑変性の治療薬である抗VEGF薬が有効な場合があります。
当院では抗VEGF薬投与が可能です。抗VEGF薬投与が効果を示さない場合は、漏出点を同定してのレーザー治療や低用量光線力学療法を検討しますが、その場合、フルオレセイン造影検査が必要なため、総合病院へ紹介しております。
眼内レンズ偏位、眼内レンズ落下(眼内レンズ強膜内固定)
眼内レンズがあるべき位置からずれた状態を眼内レンズ偏位、眼の奥に落下した状態を眼内レンズ落下と言います。眼内レンズ偏位の状態では視力検査が良好でも、眼内レンズがずれているため見え方が不安定だったり、一部見えない範囲が出現するようになります。眼内レンズ落下の場合は完全に見えない状態になり、視力を確保するためには分厚い眼鏡が必要になります。
手術としては偏位・落下したレンズを取り除き、新しいレンズを眼球の壁に直接固定する強膜内固定というものを行います。偏位・落下ともに眼の奥にある硝子体を処理する必要があるので、硝子体手術も合わせて行う必要があります。
また、この技術は白内障手術時のトラブルでも活かすことができます。何らかの事情で眼内レンズを通常の場所に固定できない場合、強膜内固定にて対応します。
当院では眼内レンズ偏位、落下に対する眼内レンズ強膜内固定に対応しています。執刀を担当する院長の東は数多くの症例を手掛けてきました。ぜひ当院に相談に来ていただければ、と思います。

